研究・教育
多摩大学出版会
書籍の紹介
巴特尓(バートル) (著)
内モンゴル 近現代史研究
覚醒・啓蒙・混迷・統合2019/11/22刊行
単行本: 464ページ
(税込)¥3,080
ISBN-13: 978-4893901590内容紹介
近年、中国は労働集約型から内需主導型発展モデルへの転換、産業の高度化(「中国製造2025」)に注力する一方、「一帯一路」広域経済圏構想と並行して設立したアジアインフラ投資銀行(AIIB)に象徴されるように新しい国際秩序の構築に向けた積極的な挑戦と関与を続け国際社会におけるプレゼンスを高めている。
本書は、中国が標榜する「一帯一路」広域経済圏構想が推進され具現化していくプロセスにおいて重要な中核拠点となり得る中国の辺境地域とその周辺諸国を網羅した「中国の辺境経済圏」の諸相を政治外交、経済、歴史など多様な視点から考察することは中国の今後の行方を占ううえで非常に重要な意味を持つという問題意識を踏まえて、「中国の辺境経済圏」の一角を成す内モンゴル地域をめぐる20世紀前半の国際政治の力学と同地域における一連のモンゴル民族の政治運動を考察したものである。
20世紀前半の内モンゴル人が「民族」・「地域」・「国家」というものをどのように考え、行動したのか、或いは自らを内包する「国家」に対してどのように望み、またはどうして欲しかったのか、という問題を当時の国際政治と中国国内の政治情勢たる「外なる側面」とモンゴル人自身の「内なる側面」という二つの視点から捉え、「内モンゴル」という新しい視座から内モンゴルの近現代史、そして中国、日本の近現代史研究の空白の一側面を再構成し、21世紀における日本と中国、日本とアジア諸国との連携・相関に関する新たな問題提起を試みたのである。目次
はしがき
凡例
序章
第1部 モンゴル人の「民族」的覚醒とモンゴル独立、そして内モンゴル
第1章 清代モンゴル社会の変容
第1節 清朝とモンゴル
第2節 清朝のモンゴル支配
第3節 モンゴル社会の変容
第2章 モンゴル人の「民族」的覚醒
第1節 モンゴル地域における「新政」
第2節 モンゴル人の「民族」的覚醒
第3節 モンゴル人の反清反漢運動
第3章 辛亥革命とモンゴル問題
第1節 清朝の崩壊とモンゴル独立宣言
第2節 モンゴル独立をめぐる国際関係
第3節 モンゴル人王公の政治的対応
第4章 袁世凱政権の内モンゴル支配
第1節 官制改革と「蒙古待遇条例」の公布
第2節 東西モンゴル王公会議
第3節 三つの特別区の設置
第5章 「大モンゴル国」運動とパンモンゴリズムの諸相
第1節 チタ会議と「大モンゴル国」臨時政府の樹立
第2節 パンモンゴリズムの諸相
第3節 「大モンゴル国」運動の意味
第2部 内モンゴル人民革命党による自治・啓蒙運動
第1章 ダムバドルジ政権とモンゴル民族解放運動
第1節 ダムバドルジ政権の誕生
第2節 ダムバドルジ政権のモンゴル民族解放運動
第2章 第一次国共合作と両党の民族論
第1節 中国国民党の民族政策
第2節 中国共産党の民族論
第3章 内モンゴル人民革命党の自治・啓蒙運動
第1節 内モンゴル政治における二つの潮流
第2節 内モンゴル人民革命党の成立と自治・啓蒙運動
第3節 国共合作の崩壊とモンゴル民族解放運動の退潮
第3部 「混迷」の時代─徳王の内モンゴル自治運動と日本
第1章 満洲国家建設と興安省の成立
第1節 満洲事変後の内モンゴル東部地域の政治情勢
第2節 関東軍の新国家建設構想と対内モンゴル政策
第3節 モンゴル人の「満州国」参加と「興安省」の成立
第2章 徳王の内モンゴル自治運動の開始
第1節 国民政府下の内モンゴル地域
第2節 徳王の自治運動の開始
第3節 中国共産党の主張
第3章 「モンゴル独立」と「民族協和」
第1節 関東軍の「内蒙工作」の本格化
第2節 「高度自治」から「モンゴル独立」へ
第3節 「モンゴル独立」と「民族協和」の相克
第4節 国共両党の民族論と戦後国家構想
第4部 戦後モンゴル・ナショナリズムの高揚と内モンゴル統合
第1章 モンゴルナショナリズムの高揚と「東モンゴル自治政府」の成立
第1節 戦後内モンゴルの政治情勢
第2節 国共両党の民族政策と内モンゴルへの対応
第3節 内モンゴル自治運動聯合会の成立
第4節 「東モンゴル自治政府」の成立と模索
第2章 「高度自治」から「民族区域自治」へ
第1節 承徳会議とモンゴル民族運動の退潮
第2節 国共内戦の勃発と中国共産党の民族政策の変遷
第3節 内モンゴル自治政府の成立とその性質
第4節 内モンゴル自治区の領域変遷
終章
参考文献
あとがき
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